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2010/7/12
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~変わる日本語能力試験~
中国でも年間約35万人が受験!
「実際の場活で使える日本語能力」を重視した内容に
 
 日本語能力試験とは、日本語を母語としない人の日本語能力を測定し認定する試験で、国際交流基金と日本国際教育支援協会が共催する。日本留学や留学ビザ申請の条件の1つともなるこの日本語能力試験が2010年7月4日に実施された試験より改定された。
 日本語能力試験は、1984年に第1回目が15の国と地域の21都市で約7000人を対象に実施されて以降、この26年間で実施国や受験者数が拡大の一途をたどってきた。2009年度には、これまでに年1回の実施を年2回に拡大し、全世界50以上の国と地域、200以上の都市で合計77万人が受験。中国での受験者数は、じつに約35万人にも達している。
 第1回目の実施以降、26年間にわたって大幅な改定はなされなかった日本語能力試験だが、90年代以降「コミュニケーション能力」を重視する気運が高まり、日本語を習得する目的にも「実際の生活で活用したい」というように、試験を取り巻く環境には変化が生じてきた。そのため、日本語能力試験の主催者のひとつである国際交流基金日本語試験センター(以下、日本語試験センター)を中心に、ここ5年間、改善のための検討が重ねられてきた。今回は、その検討の成果を踏まえての改定となった。

今回の改定のポイントは大きく4つある。
  • コミュニケーション能力をより重視した試験となった。
  • レベルが4段階から5段階に増えた。
  • 得点等化による尺度得点となった。
  • 日本語を使ってどんなことができるのかがイメージしやすくなった。

コミュニケーション能力を重視した試験に
聴解の得点配分も総得点の1/3にまで引き上げ

 今回の改定では、「実際の場面で使える日本語能力」をより重視した内容となったことが注目されている。日本語試験センターによると「新しい試験では、日本語の文字や語彙、文法をどれくらい知っているのかだけではなく、それらの知識を実生活で活用できるコミュニケーション能力も重視しています」という。①日本語の文字や語彙、文法についてどのくらい知っているかを「言語知識(文字・語彙・文法)」で、②その知識を実際のコミュニケーションで使えるかを「読解」と「聴解」という試験科目で測る。「言語知識によって裏打ちされた言語能力」がどの程度なのか、つまり「使える日本語の能力」がどの程度なのかを測定する試験となったのだ。
 この改定にともない、聴解の試験の得点配分も変更された。旧試験では、総合得点400点に占める聴解の配分は100点と4分の1だったが、新試験では180点中60点と3分の1にまで引き上げられた。

レベルが4段階から5段階に
日本語能力をより細かく測定

 また、旧試験ではレベルが4段階(1級~4級)だったが、新試験ではN1~N5までの5段階となった(表1)。これについて、日本語試験センターでは「旧試験の4級よりも低いレベル、あるいは旧試験1級よりも高いレベルというように、単純に新しいレベルが1つ追加されたのではありません」とコメントしている。「旧試験では2級と3級のレベルに開きがあることが指摘されていました。そのことを踏まえ、新試験では2級と3級の間をカバーするレベルとなる「N3」を新設したのです。N3は、主に教室内で学ぶ基本的な日本語と現実の生活の幅広い場面での日本語をつなぐ『橋渡し』のレベルといえます。旧試験よりも細かく日本語能力を測定できるようになったことで、使える日本語とするためのステップアップに利用できます」(日本語試験センター)。N3の新設とあわせて、「N1」が、合格ラインは旧試験の1級とほぼ同じであるものの、旧試験の1級よりもやや高いレベルまで測れるようになる設定されたのも特色といえる。
 なお、解答は現行試験と同様に選択枝によるマークシート方式で行い、コミュニケーション能力を重視した試験ではあるが、実際に会話するような試験は実施されない。 

勉強の方法は「今まで通りで大丈夫」
文字・語彙、文法、読解、聴解をバランスよく

 コミュニケーション能力を重視した試験となったこと、レベルが5段階となったこと以外にも改定されたところがある。日本語能力試験では、異なる時期に実施される試験では出題される問題も異なるため、試験の難易度が多少変動してしまうケースがあった。新試験では「等化」という方法を用いて、異なる時期に実施された試験の得点でも相互に比較できるようにした。つまり、N1やN3など、同じレベルの試験であれば、いつの試験でも得点を比較することが可能となったのだ。
 さらに新試験では、各レベルの合格者が、その日本語能力で実際にどのようなことができると考えているのかをまとめた「日本語能力試験Can-doリスト」(仮称)も提供される予定だ。
 さて、コミュニケーション能力を重視する内容に改定された日本語能力試験だが、その対策のための勉強はどうすればいいのだろうか。日本語試験センターによれば「勉強は原則、今まで通りで問題ありません」という。さらに「丸暗記するだけではなく、日本語を幅広いコミュニケーションのことばとして勉強している学生あれば大丈夫です。読解、聴解、文字・語彙、文法の4つをバランスよく勉強してください」(日本語試験センター)。
 中国で年間約35万人が受験する日本語能力試験。改定のポイントをしっかりと理解し、より高い日本語能力を身に付けることが、日本留学を実現する近道の1つとなるかもしれない。

N1 旧試験の1 級と合格ラインはほぼ同じ。ただし、旧試験の1級よりもやや高めのレベルまで測れる。
N2 旧試験の2 級とほぼ同じレベル。
N3 旧試験の2 級と3 級の間のレベル。(新設)
N4 旧試験の3 級とほぼ同じレベル。
N5 旧試験の4 級とほぼ同じレベル。
※N1とN2の試験科目は「言語知識(文字・語彙・文法)・読解」と「聴解」の2科目。
※N3、N4、N5の試験科目は「言語知識(文字・語彙)」「言語知識(文法)・読解」「聴解」の3科目。
>> 日本語試験センター

 

 
 
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